親知らずの抜歯とは?

前歯の中央から数えて8番目にある奥歯が親知らずです。永久歯は12歳ごろに生えそろいますが、親知らずはそこから少し遅れて20歳前後、中には30歳ごろになって遅れて生えて来たり、先天的に存在しない方もいます。
親知らずは、必ず抜く必要があるのでしょうか?
まっすぐ生えて上下で噛み合い、歯みがきができていて、親知らずや手前の歯に問題がなければ、抜かずに経過をみることがあります。一方、歯ぐきが一部かぶったまま生えている歯や、横向き・斜め向きに埋まっている歯は、汚れが残りやすく、歯ぐきの炎症やむし歯につながることがあります。
抜歯するかどうかは、痛みの有無だけでなく、親知らずの位置、生え方、清掃のしやすさ、手前の歯への影響、画像検査で確認できる周囲の状態などを踏まえて判断します。症状がない場合も、気になる方は一度ご相談ください。画像上も問題が見つからなければ、定期検診で状態を確認することがあります。
こんな場合はご相談ください
歯ぐきが腫れる、痛みを繰り返す
親知らずの一部だけが見えていると、歯と歯ぐきのすき間に汚れがたまり、周囲に炎症が起きることがあります。これを「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」といいます。炎症が強い場合は、まず洗浄や薬で症状を落ち着かせ、その後に抜歯するかを検討します。腫れや痛みを繰り返す場合は、抜歯が選択肢になることがあります。
親知らず、または手前の歯がむし歯になっている
親知らずは奥にあり、治療や清掃が難しい場合があります。また、横向きの親知らずと接する手前の歯(第二大臼歯)の後ろ側に、むし歯や歯周病が見つかることもあります。親知らずだけでなく、手前の歯を残せるか、どの歯をどの順番で治療するかを確認します。
横向き・斜め向きに埋まっている
横向きや斜め向きに埋まった親知らずは、手前の歯に接触していることがあります。手前の歯の根が吸収されていないか、歯と歯の間に汚れがたまっていないかなどを画像で確認します。生え方だけで抜歯を決めるのではなく、実際に周囲へ影響があるかを診査します。
歯ぐきの中に完全に埋まっている
完全に埋まっていても、周囲に病変や症状がなく、手前の歯にも影響がない場合は、すぐに抜歯せず経過観察となることがあります。画像で袋状の病変などが疑われる場合や、周囲の歯に影響がある場合は、追加検査や治療を検討します。嚢胞などの病変が見つかることはありますが、必要以上に心配せず、検査結果に基づいて説明を受けましょう。
親知らずの近くに神経や上顎洞がある
下顎の親知らずの根が、唇やあごの感覚に関わる神経に近い場合があります。上顎では、歯の根と上顎洞(頬の奥にある空洞)が近いことがあります。通常のレントゲンで位置関係の確認が難しい場合など、必要に応じてCT撮影を検討します。画像や全身状態から、当院での抜歯が適切か、口腔外科などへの紹介が望ましいかを判断します。
矯正治療や歯並びが気になる
親知らずがあることだけを理由に、歯並びが必ず悪くなるとは限りません。矯正治療の前後に抜歯が必要かどうかは、治療計画や親知らずの状態を踏まえて矯正担当医と相談します。
親知らずの抜歯をしなくてもいい人
親知らずが生えたからと言って、すべての人が抜歯をしなければいけないわけではありません。親知らずがまっすぐ生えて上下で噛み合い、歯みがきもできていて、親知らずや手前の歯に問題がなければ、抜歯をせずに定期検診で経過をみることがあります。
また、完全に骨の中に埋まっていて周囲に病変や症状がなく、ほかの歯に影響を与えていなければ、経過観察とする場合があります。親知らずの状態によっては、将来、歯を失った部位への移植などに使える可能性もあります。
こんな方におすすめ

次のようなお悩みがある方は、親知らずの状態を一度確認することをおすすめします。
- 親知らずの周りの歯ぐきが腫れる、痛みを繰り返す
- 親知らずが斜めや横向きに生えている、埋まっている
- 親知らずや手前の歯がむし歯になっている
- 磨き残しが気になる
- 口臭が気になる
- 矯正治療を予定している、歯並びとの関係が気になる
このようなお悩みがありましたら、まずは当院までお気軽にご相談ください。
診察・検査について
まず、お口の中を診察し、痛みや腫れの経過、親知らずの見え方、手前の歯や歯ぐきの状態を確認します。必要に応じてレントゲン撮影を行い、歯の向きや根の形、手前の歯との位置関係を調べます。神経や上顎洞との位置関係をより詳しく確認する必要がある場合は、CT撮影を検討します。
診査後、抜歯の必要性、処置の難易度、予想される症状やリスクをご説明します。親知らずの深さや向き、神経との位置関係、持病や服用中のお薬によっては、口腔外科などをご紹介する場合があります。血液をさらさらにする薬、骨に関わる薬、糖尿病などの持病がある方は、診察時にお知らせください。自己判断で薬を中断せず、服用方法もご相談ください。
当院の親知らずの抜歯における特徴

親知らずの抜歯は処置前後ともにどうしても痛みや出血を伴います。そのため、当院では痛みを軽減できるように、次の4つの工夫を行っております。
- 表面麻酔で処置中の痛みを軽減
- 極細の注射針を使用し、注射時の痛みを軽減
- 使用する歯科器具にも細心の気遣いをする
- 適切な処方で、術後の痛みを軽減する
親知らずの抜歯は、処置後の痛みだけではありません。痛みに弱い方であれば処置前に行う麻酔にも反応してしまいます。普段は痛みの耐性があっても、慣れない歯医者で緊張していれば、痛みに敏感になることもあるでしょう。
そのため、当院では希望があれば表面麻酔を使用して歯茎に行う注射の痛みを軽減します。処置中に痛みがあれば、注射麻酔を追加することもできますので我慢せずにお知らせください。
また、処置中の丁寧な手技は、処置後の痛みや腫れをできるだけ抑えることにつながると考えています。使用する歯科器具にも細心の注意を払い処置を行い、処置後は必要に応じて痛み止めを処方します。
親知らずを移植に使えることがあります
親知らずの形や大きさ、移植先の状態などの条件が合う場合、失った奥歯の部位へ親知らずを移植できることがあります。ただし、すべての親知らずが移植に適しているわけではなく、移植後に定着しない、歯根の治療や被せ物が必要になるなどの可能性があります。移植が適切かどうかは、検査のうえで個別に判断します。
当院の親知らずの抜歯治療の症例
左下の奥歯の被せものがとれてしまった。診査診断後、保存不可能と判断。抜歯した部位へ、親知らずを移植したケース。
Before

親知らず移植直後

After(親知らず移植直後)

| 患者様の主訴 | 左下の奥歯の被せものが取れてしまったところを治療してほしい。 |
|---|---|
| 診断結果 |
むし歯が進んで被せものをいれることができない為、保存不可能 ⇒ 上顎の親知らずを抜歯後、そのままその歯を移植 |
| 治療内容 |
抜歯し、右上の親知らずを抜歯した後、そのままその歯で移植をおこない、縫合。 3週間後根管治療し、ジルコニアクラウンを入れました。 |
| 治療後経過 | 歯牙の動揺、腫れ等なく経過7年し、問題なし。 |
| 治療期間 | 1か月 |
| 治療費用 | 約20万 |
| リスク・副作用 | 移植する歯が抜歯時に破折した場合や、移植した歯が定着しない場合は抜歯となる。 |
親知らずの抜歯のメリット・デメリット
親知らずを抜歯するメリット・デメリットを説明します。
親知らずの抜歯のメリット
親知らずを抜歯するメリットは次の通りです。
- ハミガキが楽になる
- 親知らずが原因で起こる腫れや痛みなどのトラブルを防ぐことにつながる
- 虫歯や歯周病のリスクが減る
- 口臭の予防につながることがある
親知らずが変な方向に生えたり歯の先だけ萌出したりしていると、磨き残しができやすくなります。また、手前の歯とのすき間に歯垢が残りやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。親知らずを抜歯することで、清掃しやすくなり、歯垢が原因で起こる虫歯や歯周病、口臭の予防につながることがあります。
親知らずの抜歯のデメリット
親知らずを抜歯するデメリットは次の通りです。
- 抜歯後に痛み・出血・腫れなどの症状が出ることがある
- まれに神経の損傷による唇・あご・舌のしびれや感覚の変化が生じることがある
- 抜歯した親知らずは、将来の移植などに使うことができなくなる
親知らずの抜歯は外科的な処置になるため、どうしても出血を伴います。処置中は麻酔を使用するため痛みは感じることは少ないですが、抜歯が終わってしばらくすると徐々に痛みと腫れが出てきます。
また、下顎の親知らずの根の近くには、唇やあごの感覚に関わる神経が通っていることがあり、親知らずの位置や生え方によっては、まれにしびれや感覚の変化が生じることがあります。上顎では、歯の根と上顎洞の位置関係によって、口と上顎洞が交通することがあります。当院では、必要に応じてCT撮影などで位置関係を確認し、リスクを踏まえて当院での抜歯が適切か、口腔外科などへの紹介が望ましいかを判断します。
なお、親知らずは条件が合えば移植などに使える場合もありますが、適応は限られます。抜歯するか残すかは、親知らずの状態を確認したうえでご相談ください。
当院の親知らずの抜歯の流れ

当院の親知らずの抜歯の流れは次の通りです。
- 診察・お口の清掃
- 麻酔
- 必要に応じて歯ぐきを切開し、歯が見える状態にする
- 歯科器具で歯と歯茎を切り離す
- 親知らずを抜く(必要に応じて歯を分割して取り出す)
- 抜歯した部分を止血する
- 場合によっては縫合し、ガーゼを噛んで止血する
処置の内容や所要時間は、親知らずの位置や根の形によって異なります。抜歯後は止血のために30分程度奥歯でガーゼを噛んでいただくことがあります。止血後も血がにじむことがありますが、出血が止まらない場合は早めに当院へご連絡ください。
麻酔が切れると徐々に痛みが出てくることがあり、処置後数日ほど頬が腫れることがあります。痛みや腫れの程度には個人差があります。痛み止めや抗生剤などは必要に応じて処方しますので、歯科医師の指示に従ってご使用ください。
抜歯の方法と処置後の経過
親知らずの状態に応じて、局所麻酔を行い、歯を抜きます。歯ぐきに埋まっている場合は、歯ぐきを切開したり、歯を分割して取り出したりすることがあります。
抜歯後は、痛み、腫れ、内出血、口の開けにくさが出ることがあります。下顎の親知らずでは、まれに唇・あご・舌のしびれや感覚の変化が生じることがあります。上顎では、歯の根と上顎洞の位置関係によって、口と上顎洞が交通することがあります。出血が続く、感染、抜歯した穴の治りが遅れて強く痛む「ドライソケット」なども、事前に知っておきたい合併症です。リスクは歯の位置などによって異なるため、処置前に個別に説明します。
抜歯後の過ごし方
抜歯当日は、強いうがい、傷口を舌や指で触ること、激しい運動、長時間の入浴、飲酒、喫煙を控えてください。傷口にできる血のかたまりは治癒に関わるため、出血が気になっても何度もうがいをしないようにしましょう。食事や歯みがき、処方薬の使い方は、抜歯後の状態に合わせた説明に従ってください。
出血が止まらない、強い痛みや腫れが続く・悪化する、発熱や体調不良がある場合は、早めに当院へご連絡ください。抜歯後の痛みや腫れには個人差がありますので、気になる症状があれば自己判断せずご相談ください。
よくある質問
Q.痛みがない親知らずも抜いた方がよいですか?
A.痛みがなく、周囲の歯や歯ぐきに問題がない場合は、抜歯せずに定期的に経過をみることがあります。症状がなくても、手前の歯への影響などがないかは診察と画像検査で確認します。
Q.腫れているときに、すぐ抜歯できますか?
A.炎症の程度やお口の状態によって対応が異なります。まず洗浄や薬で炎症を落ち着かせてから抜歯を検討する場合があります。顔の腫れや口の開けにくさが強い場合は、早めに受診してください。
Q.抜歯後、腫れや痛みはどのくらい続きますか?
A.親知らずの位置や処置の内容、体質によって異なります。腫れ、痛み、口の開けにくさが一時的に出ることがあります。症状が強い、または悪化している場合はご連絡ください。