歯石を取ったら歯と歯の間に隙間ができた…歯を削られた?
先生、歯石取りをした患者さんから、『歯と歯の間に隙間ができたんですけど、歯を削りましたか?』って聞かれることがあります
ありますね。特に歯石がたくさん付いていた方は、歯石を取ったあとに『スカスカになった』『歯が長くなった』と感じることがあります
実際、歯を削っているんですか?
基本的には違います。適切な歯石除去で、歯と歯の間に目で見て分かるほどの隙間ができるように健康な歯を削るわけではありません
じゃあ、どうして急に隙間ができたように見えるんですか?
大きく分けると、
①もともとの隙間を歯石が埋めていた
②腫れていた歯ぐきが引き締まった
③歯周病によってすでに歯を支える組織が減っていた』
という3つが考えられます
そもそも歯石って何ですか?
まず、歯石って何なんですか?
歯の表面に付着したプラーク、いわゆる歯垢が石灰化して硬くなったものです
歯磨きでは取れないのですか?
一度硬くなった歯石は、通常の歯ブラシで取り除くのは難しいです。そのため、歯科医院でスケーラーなどの専用器具を使って除去します
それを取ったら、隙間ができることがあるんですね
そうですね。ただし、歯石を取ったことで新しい隙間を作った、というわけではないことが多いです
理由① もともとの隙間を歯石が埋めていた
歯石が歯と歯の間を埋めていることって、本当にあるんですか?
あります。歯石が多く付着している場合、歯と歯の間にまで歯石が付いて、隙間を埋めているような状態になることがあります
それを取ったら……
当然、その下にあったスペースが見えるようになります
じゃあ、歯石取りで隙間ができたんじゃなくて?
もともとあった隙間が、歯石を取ったことで見えるようになったということです
なるほど。これは患者さんからすると結構びっくりしますね
そうですね。特に下の前歯などに歯石が多く付着していた方は、除去後に舌で触った感覚もかなり変わることがあります
理由② 腫れていた歯ぐきが引き締まった
歯ぐきが原因の場合もあるんですか?
むしろ、こちらも非常に大切です。プラークや歯石によって炎症が起きると、歯ぐきは赤く腫れます
歯石を取るとどうなりますか?
歯石を除去して、日々の歯磨きも改善すると、炎症が落ち着いて歯ぐきが引き締まってきます
それで歯と歯の間が広くなったように見えるということですか?
そうです
『歯石を取ったら歯ぐきが下がった』というのは、治療で悪くなったわけではないんですね
そうとは限りません。むしろ、炎症で腫れていた歯ぐきが健康な状態に近づいた結果として、歯ぐきが下がったように見えることがあります
理由③ すでに歯周病で骨が減っていた
先生、ここは患者さんには少し分かりにくいと思うんですけど、歯周病って歯ぐきが下がるだけじゃないんですよね?
そうなんです。歯周病が進行すると、歯を支えている『歯槽骨』という骨が失われていきますそうなんです。歯周病が進行すると、歯を支えている『歯槽骨』という骨が失われていきます
骨が減っていても、自分では気づかないことがありますか?
かなりあります。歯周病は痛みがほとんどないまま進行することがありますからね
しかも歯石が付いていて、歯ぐきも腫れていたら?しかも歯石が付いていて、歯ぐきも腫れていたら?
見た目では分かりにくいことがあります
それを治療すると?
歯石がなくなり、炎症が改善して歯ぐきが引き締まることで、以前から起きていた歯周病による変化が、見た目にも分かるようになることがあります
『歯石を取ったから骨や歯ぐきがなくなった』わけではないんですね
そこは非常に重要です
歯石取りで歯はまったく削れないんですか?
でも先生、歯石取りって金属の器具を歯に当てますよね。『絶対に歯は削れません』と言っていいんですか?
歯石取りは、虫歯治療のように歯を削って形を変えることを目的とした処置ではありません。ですから、歯と歯の間に目で分かるような隙間を作るほど健康な歯を削る処置ではありません
でも歯ぐきの中の歯石を取る場合もありますよね
はい。歯ぐきの中に付着した歯石を取るSRPでは、歯根面に器具を当てて処置します
だから『歯には一切触れません』という説明も正確ではない?
そうですね。大切なのは、歯や歯根面へのダメージをできるだけ抑えながら、必要な歯石やプラークを適切に除去することです
歯石を取ったら「スースーする」のはなぜ?
『歯石を取ったら歯の間がスースーする』というのもよく聞きます
ありますね
これも隙間ができたから?
歯石が埋めていた部分が開いたり、腫れていた歯ぐきが引き締まったりすると、今までとは舌触りが大きく変わります
舌って敏感ですもんね
かなり敏感です。ほんの少し形が変わっただけでも『穴が開いた』『歯がなくなったみたい』と感じることがあります
時間が経てば慣れますか?
違和感については、徐々に慣れてくる方が多いですね
歯石を取ったあと、歯がしみることもある?
隙間だけじゃなく、『歯石を取ってから冷たいものがしみる』という方もいます
あります。特に歯周病などによって歯ぐきが下がっている場合、今まで歯石に覆われていた歯根面が露出すると、一時的にしみることがあります
知覚過敏ですね
そうです
これは様子を見ていいですか?
軽い知覚過敏であれば落ち着いてくることもあります。ただ、強くしみる、何もしなくても痛い、噛んでも痛い、長期間続くといった場合は、別の原因がないか確認した方がいいですね
前歯に黒い三角形の隙間ができたのは何?
前歯だと、歯と歯の間に黒い三角形みたいな隙間ができることもありますよね
いわゆるブラックトライアングルですね
歯周病が原因ですか?
歯周病も原因の一つですが、それだけではありません。歯の形、歯並び、歯ぐきの位置、加齢、矯正治療なども関係します
歯石を取ったあとに急にできたように見えることもある?
あります。もともと歯石や腫れた歯ぐきによって見えていなかったスペースが、治療後に見えるようになることがあります
隙間ができるなら、歯石を取らない方がよかった?
患者さんからしたら、『こんなに隙間ができるなら、歯石を取らない方がよかった』と思うかもしれません
その気持ちは分かります。ただ、歯を長く残すことを考えると、歯石をそのままにしておくことはおすすめできません
歯石が隙間を埋めてくれているなら、そのままでも良さそうに見えますけど
歯石の表面はザラザラしていて、プラークが付着しやすい環境になります。そのまま炎症が続けば、歯周病がさらに進行する可能性があります
つまり、歯石で隙間を隠しても根本的な解決にはならない
その通りです。見た目上の隙間を歯石で埋めておくことよりも、歯周病の進行を抑えて歯を長く残すことの方が重要です
同じ「隙間」でも意味が違う?
先生、歯石を取ったあとに隙間ができた人は、みんな歯周病なんですか?
いいえ。ここがとても大切です
違うんですか?
例えば、Aさんは歯ぐきが腫れていただけで、レントゲンを見ると骨はしっかり残っているかもしれません
はい
一方でBさんは、歯周ポケットが5~6mmあって、レントゲンでも歯を支える骨が減っているかもしれません
見た目は同じ『隙間』でも、全然違いますね
そうなんです。だから、隙間ができたことだけを見るのではなく、『なぜ隙間があるのか』を調べることが重要です
歯周ポケットも確認するんですか?
そうすると、前回話した歯周ポケットの検査も関係しますね
かなり関係します
3mm、4mm、5mmって測る検査ですね
はい。ただし、ポケットの数字だけで判断するわけではありません
他に何を見ますか?
プロービング時の出血、歯石の付着、歯の揺れ、レントゲンで確認した骨の状態などを総合的に見ます
4mmだから必ず悪い、5mmだから必ず重症というわけでもない
その通りです
SRPをしたら、さらに歯ぐきが下がった気がすることも?
普通の歯石取りだけじゃなく、SRPをしたあとに『さらに歯ぐきが下がった』と感じる方もいますよね
あります
なぜですか?
歯ぐきの中にある歯石などを除去して炎症が改善すると、それまで腫れていた歯ぐきがさらに引き締まることがあります
治療がうまくいっているのに、見た目としては歯が長くなったように感じることがある
そうですね。もちろん審美性も大切ですが、炎症を残して歯ぐきを腫れたままにするより、まず歯周病を安定させることが重要です
治療前の写真って大事なんですね
そう考えると、歯石を取る前の状態を記録しておくのも大事ですね
すごく大事だと思います
なぜですか?
治療後に『前はこんな隙間なかった』となったとき、治療前の状態が分からなければ比較できません
写真があると分かりやすいですね
はい。口腔内写真だけでなく、レントゲンや歯周ポケット検査なども合わせて確認すると、歯石が取れただけなのか、歯ぐきの炎症が改善したのか、もともと骨吸収があったのかを患者さんにも説明しやすくなります
そう歯科学芸大学ではどうする?
では、そう歯科学芸大学では、歯石が付いている患者さんに対してどうしていますか?
私たちは、『歯石を取ること』自体をゴールにはしていません
どういうことですか?
大切なのは、その歯石がなぜ付いているのか、歯ぐきに炎症があるのか、歯周病が進行しているのか、そして今後その歯を長く残すために何が必要なのかを考えることです
検査してから考えるということですね
そうですね。そう歯科学芸大学では必要に応じて、口腔内写真、レントゲン、歯周ポケット、出血、歯の揺れなどを確認します
歯石があるから、とにかく全部取る、ではない?
もちろん歯石の除去は大切ですが、必要のない治療まで行うのではなく、検査結果をもとに必要な処置をご提案することを大切にしています
歯石取り一つでも同じなんですね
そうですね。『歯石がありますから取りますね』だけではなく、今どういう状態なのか、なぜ取る必要があるのか、取ったあとにどんな変化が起こる可能性があるのかまで、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思っています
よくある質問
Q. 歯石を取ったら歯と歯の間に隙間ができました。歯を削られましたか?
結局、一番聞かれそうなのはこれですね
基本的には、歯を削って隙間を作ったわけではありません。もともとの隙間を歯石が埋めていたり、炎症で腫れていた歯ぐきが引き締まったりして、隙間が見えるようになった可能性があります
Q. 歯石を取ったら歯ぐきが下がったのは失敗ですか?
必ずしもそうではありません。炎症で腫れていた歯ぐきが健康な状態に近づくことで、歯ぐきが下がったように見えることがあります
Q. 歯石を取ったら歯が長くなった気がします
歯ぐきの炎症が改善したことや、もともと歯周病によって歯ぐきや骨が下がっていたことなどが考えられます
Q. 歯石を取ってから食べ物が挟まります
隠れていたスペースが見えるようになったり、歯ぐきが引き締まったりすると、食べ物が入りやすく感じることがあります。フロスや歯間ブラシなど、その場所に合った清掃方法を確認することも大切です
Q. 歯と歯の隙間は元に戻りますか?
原因によります。歯周病によって失われた組織が自然にすべて元通りになるとは限りません。まずは歯ぐきの状態を安定させて、必要であればその後に見た目への対応を検討します
まとめ
では最後に、歯石を取ったあとに隙間ができて不安になっている方へお願いします
歯石を取ったあと、
『歯と歯の間がスカスカになった』
『歯ぐきが下がった』
『歯が長くなった』
『もしかして歯を削られた?』
と不安になる方はいらっしゃいます。
でも多くの場合、歯石取りによって新しく隙間を作ったのではなく、もともとの隙間が見えるようになったり、炎症で腫れていた歯ぐきが引き締まったりした結果です。
そして本当に大切なのは、隙間ができたことそのものより、
『なぜそこに隙間があるのか』
を確認することです。
歯周病によって歯を支える骨が減っているのであれば、これ以上進行させないことが歯を長く残すことにつながります。
そう歯科学芸大学では、歯周ポケット、出血、口腔内写真、レントゲンなどから現在のお口の状態を確認し、必要な治療とその理由をできるだけ分かりやすくお伝えしたうえで治療を進めています
『隙間ができた=削られた』とは限らないということですね
そうですね。『歯石がありますから取りますね』だけではなく、今どういう状態なのか、なぜ取る必要があるのか、取ったあとにどんな変化が起こる可能性があるのかまで、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思っています