「歯が少し揺れています」と言われました。大丈夫?歯の動揺の原因と治療について解説
先生、歯医者で『この歯、少し揺れていますね』と言われたら、心配になりませんか?
そうですよね。『このまま抜けてしまうの?』『歯周病が進んでいるの?』と不安になる方も多いと思います。でも、歯が揺れている=すぐに抜歯が必要、というわけではありません
健康な歯でも少し動く?
そもそも健康な歯って、まったく動かないものなんですか?
実は違います。健康な歯でも、力を加えるとわずかに動きます
えっ、健康な歯も動くんですか?
はい。歯は顎の骨に直接くっついているわけではありません。歯の根と骨の間には、歯根膜(しこんまく)という薄い組織があります
歯根膜にはどんな役割があるんですか?
噛んだときの力をクッションのように受け止めたり、噛んだ感覚を伝えたりする役割があります。そのため、健康な歯にも生理的な範囲のわずかな動きがあります
じゃあ、『少し動く=異常』とは限らないんですね
その通りです。大切なのは、どの程度動いているのか、そしてなぜ動いているのかです
歯の「動揺度」って何?
歯医者さんで『動揺度1ですね』みたいな言い方をすることがありますよね
あります。歯がどのくらい動くのかを評価したものを動揺度といいます
一般的には、次のように評価します。
- 0度:生理的な範囲の動き
- 1度:前後・左右方向にわずかに動く
- 2度:前後・左右方向に明らかに動く
- 3度:前後・左右だけでなく、上下方向にも動く
数字が大きくなるほど、歯の揺れが大きいということですね
そうですね。ただし、動揺度だけで『この歯は残せない』と判断するわけではありません
歯周病で歯が揺れるのはなぜ?
歯が揺れる原因として、まず思いつくのは歯周病です
代表的な原因の一つです。歯周病が進行すると、歯ぐきの炎症だけではなく、歯を支えている歯槽骨が少しずつ失われていくことがあります
歯そのものが悪くなるというより、土台が少なくなってしまうんですね
そうです。例えば木そのものに問題がなくても、周囲の土が少なくなればグラグラしやすくなりますよね。それと少し似ています
歯周ポケットが深い人ほど注意が必要ですか?
歯周ポケットの深さは重要な情報の一つです。ただし、ポケットの深さだけでなく、出血、歯槽骨の状態、歯の動揺、プラークの付着などを総合的に評価することが大切です
歯をぶつけた後に揺れることもある?
転んだり、スポーツで歯をぶつけたりして揺れることもありますか?
もちろんあります。強い力が加わると、歯の周囲にある歯根膜がダメージを受け、歯が一時的に動きやすくなることがあります
その場合は放っておいてもいいんでしょうか?
自己判断はおすすめしません。外傷の場合は、歯が揺れているだけに見えても、歯の根が折れていたり、周囲の骨が損傷していたり、歯の神経にダメージが及んでいたりする可能性があります
見た目だけでは分からないんですね
そうなんです。特に強くぶつけた場合は、レントゲン撮影や神経の状態の確認などが必要になることがあります
噛み合わせが原因で歯が揺れることもある?
虫歯も歯周病もないのに、歯が揺れることってありますか?
あります。例えば、特定の歯に強い噛む力が集中している場合です
歯ぎしりや食いしばりも関係しますか?
関係することがあります。強い力が繰り返しかかることで、歯根膜に負担がかかり、歯が動きやすくなることがあります。これを咬合性外傷と呼ぶことがあります
じゃあ、噛み合わせを削れば治るんですか?
そこは慎重に考える必要があります。歯が揺れているからといって、すぐに歯を削って噛み合わせを調整すればよいわけではありません
原因を確認してからなんですね
はい。歯周病があるのか、噛む力が関係しているのか、外傷なのか。それによって対応は変わります
揺れている歯は元に戻る?
患者さんとしては、ここが一番知りたいと思います。揺れてしまった歯は、またしっかりするんですか?
原因や程度によっては、動揺が改善することがあります
例えば?
歯ぐきに強い炎症があって一時的に動揺が大きくなっている場合、歯周基本治療によって炎症が改善すると、歯が以前より安定することがあります
噛み合わせが原因の場合は?
過度な力が原因で歯根膜に負担がかかっている場合には、原因となる力をコントロールすることで改善する可能性があります
外傷の場合もですか?
損傷の程度によりますが、適切な処置によって安定するケースもあります
歯周病で失った骨も元に戻る?
では、歯周病で骨が減って歯が揺れている場合、その骨も元通りになりますか?
ここは少し分けて考えた方がいいですね。歯周病の治療によって炎症が改善し、歯が安定することはありますが、失われた骨が必ず元通りの高さまで戻るわけではありません
治療したら全部元通り、というわけではないんですね
そうですね。状態によっては歯周組織再生療法などを検討することもありますが、すべてのケースで適応になるわけではありません
揺れる歯を隣の歯と固定することもある?
グラグラしている歯を隣の歯とくっつける治療もありますよね?
あります。必要に応じて、隣接する歯と固定して歯の動きを抑えることがあります
固定すれば治るんですか?
固定そのものが原因を治すわけではありません。例えば歯周病が原因なら、歯周病の治療が必要です
固定はあくまで方法の一つ?
その通りです。『揺れているからとりあえず固定する』のではなく、なぜ揺れているのかを診断することが先です
グラグラしていたら抜歯になりますか?
先生、やっぱり患者さんが一番怖いのは『抜歯になります』と言われることだと思います
そうですね。ただ、歯が揺れているという理由だけで抜歯を決めるわけではありません
では、何を見て判断するんですか?
例えば、
- 歯を支えている骨がどのくらい残っているか
- 歯周病がどの程度進行しているか
- 歯周ポケットの状態
- 歯の動揺の程度
- 歯根が割れていないか
- 虫歯によって歯がどのくらい失われているか
- 根の周囲に感染がないか
- 噛み合わせや噛む力
- 治療後に機能できる見込みがあるか
などを総合的に判断します
『動揺度3だから絶対抜歯』みたいに、数字だけでは決めない?
はい。一本の歯を残せるかどうかは、一つの検査結果だけでは判断できません
自分で歯を揺らして確認してもいい?
『気になって舌や指で何度も触ってしまう』という人もいそうです
気持ちは分かりますが、何度も指で揺らして確認するのはおすすめしません
気になって、ついついやっちゃいそうです
特に外傷直後などは、必要以上に動かさない方がよい場合があります。『前より揺れている気がする』と感じたら、自分で何度も確認するより歯科医院で診てもらった方がいいですね
そう歯科学芸大学では何を確認する?
そう歯科学芸大学では、歯の揺れが見つかった場合、どんなところを確認していますか?
まず、『揺れている』という結果だけを見るのではなく、『なぜ揺れているのか』を考えることを大切にしています
具体的には?
動揺度だけでなく、歯周ポケット、出血、歯を支える骨の状態、レントゲン所見、噛み合わせ、歯ぎしり・食いしばり、外傷歴などを確認します
原因によって治療が全然違いますもんね
そうですね。歯周病なら歯周病の治療、外傷なら外傷への対応、噛む力が関係していれば力のコントロールなど、必要な治療を考えていきます
揺れているから、すぐ抜くわけではない
もちろんです。残せる可能性がある歯に必要のない抜歯をするべきではありません。一方で、残すことによるデメリットが大きい場合には、その理由と選択肢をご説明することも大切です
そう歯科学芸大学では、現在の状態だけでなく、その歯を今後どうすれば長く使っていけるのかまで一緒に考えることを大切にしています。
まとめ
『歯が少し揺れています』と言われても、すぐに抜けるわけではないんですね
はい。健康な歯にもわずかな生理的動揺がありますし、歯が揺れる原因には、歯周病、外傷、噛み合わせや強い力など、さまざまなものがあります
大事なのは揺れの大きさだけじゃない?
その通りです
『どのくらい揺れているか』だけではなく、『なぜ揺れているのか』『歯を支える組織がどのくらい残っているのか』を確認することが重要です
原因によっては治療によって動揺が改善することもあります
『少し揺れています』と言われて不安になった場合は、すぐに『抜けてしまうのでは?』と考えるのではなく、まず原因と現在の状態、今後の見通しについて歯科医師に確認してみてください